「婚儀の日取りが、決まりました」
「……そう、おめでとう」
「本当に、そう思っていらっしゃるのですか?」
「…………」
すがるような小春の表情に、真は思わず目を逸らす。
心から彼女を祝うことなど、できるはずもなかった。
「父はあなたに、感謝しておりました」
「そう、」
「けれど、真さま、わたくしはきっとあなたを恨むでしょう」
「小春さん」
「あなたと結ばれることが叶わないのなら、病など治らなくてもよかった」
そうすれば、あなたとずっと共にあれたのに。
「恨みます。恨みますわ、真さま」
こんなにも、こんなにもあなただけが愛しいのに。
他の男と婚姻を結ばせるためにこの病を治したあなたを、許してなどやるものか。
「小春さん、私はあなたに許しを乞うたりはしません」
「…………」
「けれど、どうか。どうか、幸せになって下さい」
どれほど望んでも叶わぬこの想いを、せめて断ち切るために。
小春の表情が悲しげに歪む。かけるべき言葉を間違えたのかもしれない。
すん、と小春は鼻を鳴らした。
「そんなことは無理です。無理ですわ、真さま」
「小春さん」
「あなたのいない人生に、幸せなどあるはずがありません」
「……っ、小春さん」
そっと、ふたつの影が寄り添う。
「この家に生まれた時点で、すべてを望めないことは承知しておりました。……ねえ、真さま」
「なんです」
「他の男のものになる前に。どうか、あなたの思い出を下さい」
闇がすべてを隠してくれる、今のうちに。
空中楼閣にて待つ