「小春さん」
「真さま!」
優しげな声が、女を呼んだ。
呼ばれた女は、男の姿を見つけるなり慌てて駆け寄る。
「今日はもう、来てくださらないかと」
「おや、家の者に今日は遅くなると伝えたはずなんですけどね」
縋るような彼女の表情に、男は苦笑した。
聞いてませんわ、と女がふくれる。
「ほら、そんな顔をしないで。今日はあなたに贈り物を持ってきたのです」
言って、男が差し出したのは小さな花束だった。
「まあ、白妙菊ね」
女の顔が、ぱっと嬉しそうに輝いた。
そんな彼女の表情を見て、男の目も幸せそうに細まる。
白妙菊は、けして華やかな植物ではなかった。
特殊なことといえば、葉が白くフェルトのようだということくらいで、ついている花は菊を小さくしたような、黄色いものであった。
けれども、彼女は喜んでいるようだった。
もしかしたら、それの花言葉を知っていたのかもしれない。
その花言葉は、“あなたを支える”。
投げ捨てた本音
(本当は愛の花を贈ってやりたかったんだ)
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20080827