出会ったとき、女は病を患っていた。
原因不明だと主治医に見放されたところを、なんとかしてくれと頼まれたのがこの男、真であった。
「……なるほど。お嬢さんの病気が分かりましたよ」
「ほう、何かね?」
症状といきさつを聞くなり医者がそう言ったので、娘の父親は訝しく思いつつも尋ねた。
主治医は娘本人を診ても病の名を明かすことができなかったというのに。
「お嬢さんが患っているのは、心の病です」
「心の病、だと?」
「ええ。人は心に大きな悩みがあると、体に異常をきたすことがしばしばあるのです」
娘の父親は、ふむ、と唸った。
「その病気は治るのかね。先程も言ったように、娘は来年嫁ぐことになっているんだ」
この父親が娘の許婚を決めてきたのはつい最近のこと。
下手な噂がついたら困る、と父親は言った。
医者はそんな娘の父親をちらりと一瞥してから、口を開く。
「大変申し上げにくいのですが、」
「治らんかね?」
「いえ、病自体は実際診てみないとなんともいえませんが……」
父親は視線だけで医者に続きを促した。
医者は一瞬躊躇ってから、意を 決したように言葉を紡いだ。
「おそらく、お嬢さんの心の病のそもそもの原因が、その婚約にあるかと」
神に祈るよりも確かな