「はじめまして、。私はリナリー・リー。よろしくね!」
そういって握手を求めてきたのは、よりも幾分か幼い少女。
可愛らしい笑顔には似合わず、その背中には重い十字架。
纏う黒い団服は、間違いなくと同じエクソシストであることを示していた。
「リナリーは、いくつですか?」
「私は13歳」
は16歳だから、私よりちょっとだけお姉さんね。
どこか嬉しそうに笑う少女を見て、の目から涙がこぼれた。
? どうしたの? どこか痛いの?」
心配そうに顔を覗き込む少女に、なんでもないといっては首を振る。
ああ、この世界はこんな幼い少女さえ戦争に巻き込むというのか。





最果てへの片道切符





13歳。
のいた世界なら、まだ義務教育を受けているだろうその年齢。
国に守られ、保護者に守られ。
そんなことが当然な世界だったというのに。
この世界では、そんな少女に世界を護れという。
だって、そんなに年が違うわけではないけれど。
、大丈夫?」
「はい、平気です」
涙を拭ったを、リナリーは不安そうに見つめる。
は彼女ににこりと笑ってみせて、もう大丈夫ですよと言った。
素直なリナリーはほっとしたような顔を作り、笑顔になる。
「あのね、のことは兄さんから聞いていて、早く会ってみたいと思ってたの」
「兄さん?」
「うん、コムイ兄さん」
ああ、言われてみれば同じ苗字だ。
言われては気付く。
そうでなくともここにアジア系の人間は少ないのだから、気付いても良さそうなだが。
「ここに、私と同じくらいの年齢の人ってあんまりいないでしょう? いても男の子だし」
だから、に会えて嬉しいの。
あまりにも純粋な好意に、は思わず面食らってしまった。
はその純粋さに応えられるほどの心を持っていない。
「リナリー、ちょっと聞いてもいいですか?」
「なあに?」
「リナリーは、どうしてエクソシストになったんですか?」
まさか、進んでエクソシストになったわけではあるまい。
こんな少女が、まだ遊びたい盛りであろう年齢の子供が、自ら世界を救おうと立ち上がったはずがない。
ともすれば、それなりの理由があるはず。
きっとそれは軽いものじゃないのだろうけど、今のには聞かずにはいられなかった。
リナリーは、一瞬きょとんと首を傾げたが、すぐにがなぜそんな質問をしたか気付いたらしく、にこりと微笑んだ。
とても聡い子だと思う。
リナリーは嫌な顔ひとつせず、静かに過去の話を語りはじめた。





話を聞き終えたとき、は涙が止まらなかった。
それは、リー兄妹の愛に感動したからではない。
ただ単純に、悲しかったからだ。
この世界は、幼い少女さえ人柱にして回り続けようとする。
それはもはや神の意志ではなく、人間の意志だ。
貪欲に生き続けようとする、人間の心。
それはごく当たり前なことだけれど、とても罪深いことのようにには思えた。
「リナリー」
「ん?」
「悲しくは、ないのですか」
オブラートに包むこともせず、ただ真っすぐ問い掛けた。
しゃくりあげなから質問をしたに、リナリーは穏やかに微笑んでみせる。
「ここが、私の居るべき場所だから」
「………っ……」
は愕然とした。
彼女は、戦うことを受け入れてしまっているのだ。
そう気付いた瞬間、また涙がこぼれてきた。
こんな幼い少女が戦争に慣れることなど、あってはならないはずなのに。
涙を流し続けるを、彼女はほんの少し困ったように見つめる。
その瞳が優しさを含んでいることに、はさらに悲しくなった。
穏やかな声のまま、彼女は続ける。
ここには兄さんがいるし、仲間がいる。
だから、悲しくないよ。
私が戦うのは、自分の小さな世界を守るためだから。
そこには確かに彼女の意志があって。
その心の強さを愚かだとも思うけど、やはり敬服せずにはいられない。
「ありがとう、。私のために泣いてくれて」
そういってを抱き締めてくれたリナリーのなんとあたたかいことか。
身長差のあまりないリナリーを抱き締め返して、は心の中で謝罪するのだ。
彼女の話を聞いてなお、己の命しか大切だと思えないことを。





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20071115