「はぁ!? 愛する人のキスで元に戻るぅ!?」
 わたしの声が、屋敷中に響いた。
「うふふ、そうなの」
 もちろん、恋愛対象として愛する男性という意味よ。愛する人のキスで呪いが解けるなんて、物語みたいで素敵でしょう? まぁ、これの場合呪いでは無いけれど。
 今にも踊りだしそうな母とは対照に、わたしはその場で口をあんぐりとアホみたいに開けて固まってしまった。



エヴァレットの書




「え、ちょ、ちょっと待ってよ! キスすれば戻るなんて……なんでそんなこと分かったの!?」
 ほんの少しだけ冷静さを取り戻したわたしは、勢いよく母に聞いた。
「ママがパパとキスして元に戻ったからに決まってるでしょう?」
 そ、そりゃそうだ。変な汗が背中を伝う。穏やかに答えた母に、わたしは更に尋ねた。
「れ、恋愛対照として愛する人じゃないといけないの?」
 母はにこりと微笑んでわたしを見た。
「試してみる?」
「え?」
 次の瞬間にはわたしは母に抱き上げられ、自分の唇には母の唇が押し当てられていた。その唇はすぐにわたしから離れていき、楽しげな母の瞳と目が合う。文句を言う暇さえなかった。……元の姿に戻る様子は無い。
「ね?」
 ………………。「ね?」じゃないっ……!!
 盛大に突っ込みを入れたくなったが、ここは我慢我慢。この人の行動にいちいち腹を立てていては、わたしの身がもたない。それは、17年間一緒に暮らしてきていたから、痛いほどよく分かっていた。しかし、真面目にどうするんだ、わたし!! キスをしないと元に戻れないと言う話はなんとなく納得できた。……なんでキスかは理由は分からないけど。母が、父とキスすることによって元に戻ったという話は嘘だと思えないし、これなら先程父が男泣きした理由も納得できる。……といっても、つい最近まで父の存在すらよく覚えていなかったので、本当にああいう性格なのかどうかは分からないけど。ああ、でも……!
「わたし、今小学1年生だよ!? 愛する人とキスなんて無理に決まってるでしょ!!」
 大体にしてわたし、小学1年生の男子なんて恋愛対象に見られないわよ!! みんなハナミズ小僧じゃない!! わたしの実年齢は17歳なの! かといって本当に年の近い人間が今のわたしのようなガキを相手にしてくれるはずがないし! ああ……もう、わたしにどうしろっていうの。
「ううっ…! パパだってが何処の馬の骨とも分からんヤツとキスをするのは反対だぞーーーー!!」
 ……ああ、お父さん、居たんだ……。というか、話をややこしくしないでくれ。突然話に加わってきた父に、わたしも母も冷たい視線を向けた。
「ううっ……! なんだ2人してその冷たい目はっ……! パパ泣いちゃうぞーーー!!」
 もう泣いてるでしょ。いい加減、心の中で突っ込みを入れるのも疲れてきたぞ。わたし、これからどうなるんだろ。はぁ、頭が痛い……。



「そういえば、今まで気にしてなかったけど、わたしの戸籍とかどうしたの?」
 一応こっちの世界には、わたしの本当の戸籍があるはずだ。しかし、年齢は17歳。小学校に通えるハズなんて無いのに。それをいうなら、前の世界の戸籍をどうやって手に入れたかも気になるけど……。
「ああ、それなら簡単だ」
 いつの間にか父は立ち直ったらしい。わたしの方を向いて、自信満々に語りだした。
「そもそも、がそんな体になった原因は国側にあるからな。全て国の計らいだ」
 国家権力か!! 確かによくよく考えてみれば、この事実を隠したいのは国の方なのだ。これ位当然というべきか。……コナン君の戸籍はどうしたんだろう? 博士のコネかなぁ?



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2006.10.6