※ デスノートとのクロスオーバーです。本編とは一切関係ありません。興味のある方のみどうぞ。
……おかしい。なにかがおかしい。真っ白なごはんをもそもそと口に運びながら、わたしは眉を寄せた。
「どうかされましたか? お嬢様」
「えっ?」
「ニュースを眺めながら、おかしい、と呟かれましたが」
「あ、ううん。なんでもないの」
思わず口に出していたらしい。わたしは笑顔で取り繕った。
そうですか、と梶岡はそれ以上追求してこない。かわりに、わたしに向けていた視線をテレビに移して、僅かに顔を顰めた。
「それにしても物騒ですね。犯罪者が次々に死んでいるとは」
「…………うん」
そう、それなのだ。わたしの気になっている点は。
(まさか、ね……)
一瞬よぎった恐ろしい考えを振り払って、わたしはきれいに焼けたシャケの身をほぐし、口の中に放り込んだ。
閉塞都市の片隅で窒息する
恐れていたことは、数日もしないうちに現実となった。
「もうニュースから目が離せませんねー」
「キラだろ? 悪人いっぱい裁いてスゲーよな」
「わたしはちょっと怖いなぁ」
小学校の帰り道。ここ数日、少年探偵団の話題といえばもっぱらキラのこととなっていた。
「ねえねえ、ちゃんはどう思う?」
「うーん……わたしは、キラのこと正義だとは思えないな」
「えー! なんでだよ」
歩美ちゃんの質問にそう答えると、元太君は不満そうな声をあげた。
「いくら犯罪者だろうと、人間が人間の命を奪う権利なんて無いと思う」
どうして人を殺してはいけないのか、と尋ねる者があるが、それは結局、どうして自分が殺されてはいけないのか、ということに繋がるのだ。他人を殺すことを認めるということは、自分が殺されることをも認めるということにほかならない。
コナン君は? と歩美ちゃんが聞いた。わたしはちらりとコナン君を見る。
「オレもに賛成だな」
思いの外あっさりと答え、コナン君は頭の後ろで手を組んだ。その顔はなんでもなさげだったが、心の中までそうではないだろうことを、わたしは知っていた。キラによって裁かれた犯罪者の中には、かつてコナン君の推理によって捕まってた者もいる。優しい彼が、それで平気なはずがない。
「キラ、早く捕まるといいね」
歩美ちゃんのその一言が、とても重く感じられた。
「ただいまー」
家に帰ると、珍しく梶岡による出迎えがなかった。見知らぬ靴が玄関にあることから、来客者があるのだと予想される。高級感そうな、黒の革靴だった。
(誰だろ?)
父の元にはよく国の要人やら大企業から仕事の依頼が入るが、自宅で取り合うことはめったにない。とすると、友人か誰かだろうか。
気になったわたしはランドセルを2階の自分の部屋に置くと、足音を立てぬようそっと下におりた。忍び足のまま父の書斎に向かい、扉の横の壁に耳を押し当てる。
「と……わけで……の…………たいのです」
「……シュ、君の…………ないだろう」
父の部屋の壁は厚く造られている。完璧に音を拾うのはかなり難しい。うーん、今度小型盗聴器とカメラでも仕掛けておこうかな。いや、でも部屋の外で使える音量増幅器の方が無難かも。そんなどうでもいいことをしばし本気で考える。どちらにせよ、必要なのは今なのであって後からでは意味が無い。……こうなったら外見が子供であることを利用してしまおうか。
わたしは急いで自分の部屋まで戻ると、先程置いたランドセルからとあるものを取り出した。それを手に掴むと、今度はわざと足音をたてて階段をかけおりる。そのまま父の部屋の前まで走っていくと、わたしはノックもせずに部屋の扉を思いきり開いた。
「お父さん! みてみて! 学校でお父さんの絵を描いたの!」
そう、わたしが手にしているのは図工の時間に描いた“お父さんの絵”。やたらリアルなこの絵は、先生からも上手だとお墨付きをいただいている。出来上がりは少々子供らしくないが、小学生である娘が描いた似顔絵というだけで父は喜んでくれるだろう。にこり、とオマケの決め笑顔もバッチリだ。
突然の乱入者に、部屋の中にいたふたりは驚いたようだったが、その乱入者がわたしであることに気付くと、父はすぐにその表情を緩めた。
「おかえり、」
「ただいま! ……あれ? お客さん?」
さも今気が付きましたというように、来客者に顔を向ける。父の返事もその客の返事も待たずに、わたしは、こんにちは、と微笑んだ。
客は感じの良い老齢の男性で、彼もまた一瞬驚いたような顔をしてから、こんにちは、と微笑み返してくれた。なんとなく、雰囲気が梶岡に似ている。男性はしばらくわたしを見てから、はっとしたような顔をした。
「もしかして、この子は10年前の……」
「ああ、私の娘だよ」
穏やかで幸せそうな返事を返した父に、やはり、と男性が呟いた。なんのことだかさっぱり分からず、わたしは首を傾げる。
そんなわたしの様子も客である男性の様子も気にせず、父は穏やかに笑んだまま口を開いた。
「キルシュ、知っての通りこの子がだ。、彼は私の友人でキルシュ・ワイミー。例の事情を知る数少ない人物のうちのひとりだよ」
「え!?」
キルシュ・ワイミー!?